うつ病・アルコール依存症…閉鎖病棟日記18 問題患者と同室になるハメに|うちの 2姉妹 と うつ病・アルコール依存症 精神病院 閉鎖病棟 体験記
僕が「尿が臭う」部屋で生活を始めて、2日経った。
「フクさん、大部屋に異動になりましたので、荷物をまとめて置いて下さい」
午前中、喫煙ルームで一服していると、看護師から声がかかった。
―― よし。 これでションベン臭いのから解放だ
たいした量ではない荷物を、午前中にまとめておいた。
昼飯後、「411号室」に案内された。
4人部屋だった。
右奥のベッドが空いていたので、そこが僕のベッドになった。
窓際でその開かない窓から景色を見ると、そこは例の長方形のドーナツの穴、吹き抜けの空間。
下を覗くと、R1病棟の時の喫煙場所と、草木が見えた。
向かいのベッドの患者さんは、知っていた。
タバコ部屋ですでに挨拶をしておいた、軽い統合失調症のオオくんだった。
軽い笑顔で「宜しくお願いします」的な挨拶をしあった。
隣のベッドは、タケさんという50代くらいのオジサンだった。
病名は良く分からないが、軽く挨拶をしておいた。
斜め向かいのベッドの人にも挨拶をしなければ。
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その男性は、見たところ60代。
額から後頭部にかけてツルツルに禿げあがっており、両サイドにわずかに残っている白髪交じりの髪は、短く刈り込んである。
左手に、昔のカシオ風の銀と白文字盤の安っぽい時計をしている。
以前、サラリーマンだった頃の名残りだろうか。
銀縁メガネを掛け、新聞を読んでいた。
いや、「声を出して」読んでいる?
「がこみぞうべらみさごぎ日本経済べごまりらぼうぃみろごの……」
―― ?
低い声でボソボソと何か、聞き取れない音を発している。
お経でも唱えているのだろうか?
「ぎみらろべごくらろべみぶアメリカぼれいむあしだがほうこびまざえ……」
視線はしっかりと新聞に突き刺さっているため、お経ではない。
しかし、発する声は新聞記事のそれではない。
「せべにたろふみよががえおだみれろぐおがにうぇろかもいおうべな……」
―― いったいなんなんだ
挨拶も忘れ、しばらく眺めていると、彼はおもむろにノートを取り出した。
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そして、ボールペンで「何か」を書き始めた。
既に「何か」が書かれている行間、その行間が埋まると、ノートの上下左右の空白の部分に「何か」を書き始めた。
横書き、縦書き、縦横無尽に。
遠くて文字は読み取れなかった。
そして書きモノが終わると彼はベッドから降り、窓の方向を向いて、裸足で床の上に正座した。
そして両手を上げると、そのまま前かがみに伏せた。
いわゆるイスラム教徒が「アラーの神へ祈りをする」格好だ。
これが20分ぐらい続く。
―― なんなんだこれは
僕は「精神病院に入院」していることを、思い出した。
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夜、消灯の時間になったので、皆、それぞれのカーテンを閉め、ベッドにもぐった。
タケさんと僕は、読書灯を点けて、しばらく本を読んでいた。
オオくんのカーテンの中は暗いので、もう眠りにつこうとしているのだろう。
そこで、予想、いや「恐れていたもの」が始まった。
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「べごまりぞうべらみさごらぼうぃみがこみぞうべらみさごぎろごの……」
―― うわわ、始まった
「ぼれいむあしだがほうこびまざえぎあしだがほうみらろべごくらろべみぶ……」
昼間より、むしろ声がでかい。
「ウルサイッ!」
突然、オオくんが怒鳴った。
声が、止んだ。
しばらく、5分くらい経った頃だろうか。
「せべにたろふみよががえおだみれろろふみよががぐおがにうぇろかもいおうべな……」
また、始まった。
「やかましいッ!!」
今度はタケさんが怒鳴る。
なんなんだこれは。
こんなことを毎晩繰り返さなければならないのか。
隣の部屋から、わずかに声が漏れてきた。
「キィィッ! ウギィィィッ! キィィィィッ!」
か細い男性の声が発狂している。
あっちもか。
僕は、嫁さんが「イビキ対策」にと入れてくれていた耳栓を、バッグから取り出した。
頼むからなんとかしてくれ。
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